【ZERBINO-ゼルビーノ- 虎ノ門 Blog 大西千波】
皆様こんにちは!
ZERBINO虎ノ門店の大西です。
皆さま毎日スーツをコーディネートし、最後に鏡の前で確認するのはどこでしょう。
Vゾーンの収まり、パンツのクリース、そして意外と見落とせないのが袖口から覗く時計です。
本日は、オーダースーツ屋の視点から考える「スーツと時計」の密接な関係についてお話しします。

私の所有する時計は、ほとんどが文字盤の薄いヴィンテージのドレスウォッチです。
なぜ薄さにこだわるのか。それは、シャツのカフスとの干渉を防ぎ、ジャケットの袖を綺麗に落とすためです。
自動巻きにはない「手巻き(マニュアル)」ならではの極限の薄さ。
そして朝、ゼンマイを巻くことで自分の時間と向き合う儀式。
この不自由さこそが、テーラードスタイルにおける究極の「奥ゆかしさ」だと私は考えています。
私はヴィンテージ時計が好きで複数ブランドの物を毎日使分けています。
Cartier、OMEGA、HAMILTON…その中でも大切に使っている父の形見であるLONGINESがあります。
LA GRANDE CLASSIQUE DE LONGINES
1832年、LONGINESが創業した当初は、腕時計といえば時間が分かればよいというシンプルなもので、今のようなクロノグラフ機能やデイト機能を備えるものではありませんでした。
そんなロンジンの中でも、シンプルとエレガンスが絶妙なバランスで融合したラ グラン クラシック ドゥ ロンジン。
美しいデザインの中核となるのは圧倒的な薄さを誇るケースですが、実はこの時計…「クォーツ」です。
手巻きこそヴィンテージの美学と信じている私でしたが、所有しているヴィンテージ時計の中で最薄となります。
父が亡くなってから20年以上実家で眠っていたので、
元々は入っていた電池から液漏れして酷い状態でした。
それでも大切に使いたいと思い、虎ノ門店の向かいにある『田中トケイ・メガネ店』で修理しました。
お父様から受け継いで創業90年を超えるお店で、町医者的な感じで地元の方から愛されています。
人柄の良い店主さんは時計が好きで、知識が豊富なうえにお話し好き。
修理を機に親しくさせてもらっていますが、全時計のメンテナンスは田中さんにお願いしています。
もしお困りのことがあれば虎ノ門店をご利用いただくついでに立ち寄ってみてください。
話が逸れましたが・・・
この時計は価格ではなく価値の高いロンジンだから大切に使ってと言っていただきました。
少し語らせていただきます。
皆さまコルムという時計ブランドはご存じですか?
現在は全く異なるデザイン性のある時計を作るブランドですが、
1960年代に発売したコインウォッチが有名で、歴代大統領たちが愛用していたと言われています。
本物のコインで作成するため、文字盤を極力薄くし軽量化する必要があり、最薄の電池で動かすしか方法が無かったようです。
当初は人気でたくさん売れたが、持続性がなく生産量が縮小され多くの備品だけが余った状態でした。
そこでロンジンが備品を一部買い付け、生産されたのがグランドクラシックモデルとのことらしいです。
クォーツのため定期的に電池を交換しますが、純正はスイス製のところ湿度に弱いというデメリットがあるため
今回からは湿度にも強い日本製にしてもらっています。
純正で付いていたものとして革ベルトもご紹介させてください。

※汚くてごめんなさい…。
かなりの年季が入っていますが、ボロボロになっても交換できずにいる純正のフランス製革ベルトです。
よく目を凝らさないと見えないくらい薄くなった微かな刻印。当時の時計産業の面白い歴史を物語っています。
1960年代〜70年代、スイス時計はその高品質なケースに対し、エレガンスの象徴としてフランス製のレザーストラップを組み合わせることが多々ありました。
スイスの精密な「技術」と、フランスの洗練された「美意識」の融合。
「なぜこのベルトなのか?」 そんな小さな疑問から当時の情勢や職人のこだわりを紐解くのは、ヴィンテージ生地(デッドストック)のルーツを探る作業と驚くほど似ています。
ボロボロになった純正ベルトを替えられないのは、その「時代の空気感」を損ないたくないという、私のささやかな抵抗かもしれません。
この些細なディテールが、私の所有欲と父への想いを満たしてくれます。
フランス製のベルトを合わせた当時の父のこだわりを想像するのも、ヴィンテージウォッチを纏う愉しみの一つですね。
ただ、日本の湿気溢れる夏に革ベルトは酷というもの。
私も夏場はステンレスベルトのヴィンテージ時計に替えて実用性を優先します。
また、たまにやる「崩し」のテクニックとして、シャツのカフスの上に革ベルトを巻くスタイルもあります。
イタリアのウェルドレッサーたちが好んだこの着こなしは、手元に独特の表情を与えてくれるので、少し変化が欲しい日にはおすすめです。
(このスタイルは弊社スタッフの南が生地商社で働く時からやっていて、
カルロ・バルベラの息子、ルチアーノ氏が日本に来た時に真似したと言っていました。真実はいかに…)


引用元:https://www.mononcle.jp/column/interview/7470/
ルチアーノ氏もロンジンを付けていますね。
最近では、街中でもスマートウォッチをスーツに合わせている方を多く見かけます。
正直に申し上げれば、クラシックなスーツスタイルの完成度という点では、ふさわしいとは言えません。
しかし、その圧倒的な利便性もまた事実。
通知を確認し、健康を管理する。現代のビジネスマンにとっての「道具」としての価値を、私は否定しません。
ただ、もし大切な商談やパーティーなど「ここ一番」という日には、ぜひ機械式のドレスウォッチを巻いてみてください。
その瞬間に、スーツの表情がグッと引き締まるのを感じていただけるはずです。
これこそが、オーダーメイドのスーツを大切に長く着こなすZERBINOのお客様に共通する「大人の愉しみ」ではないでしょうか。
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